巷では変態と呼ばれる”春画先生”芳賀一郎と、その弟子として春画に魅せられ先生にも恋心を抱く春野弓子の軽快でクセのあるラブストーリー。日本の商用映画としては初めて、無修正の春画が描写されている点で新しく美しい作品です。
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映画「春画先生」のあらすじ
https://youtu.be/311KAY0PeZI?si=xLDOcbAqB4jvSYkP
室町時代に生まれた日本文化の一つである春画は、男女の官能的なシーンがまざまざと描かれている。その春画の研究者で”春画先生”と呼ばれる芳賀一郎が春野弓子の働く喫茶店で、 弓子に春画を教えてやるから家に来いと読んだことをきっかけに、師弟関係になる二人。
ともに春画の研究をしつつ、惹かれあう二人。二人の性格や性癖をよく理解して身をこなす先生の担当編集辻本。先生の亡き妻と瓜二つの姉一葉。かき乱されながらも春画やお互いへの愛は止まらない2人の偏愛ラブストーリー。
映画「春画先生」の作品情報
製作年 | 2023年 |
公開日 | 2023年10月 |
上映時間 | 114分 |
監督 | 塩田明彦 |
原作 | 塩田明彦 |
脚本 | 塩田明彦 |
キャスト | 内野聖陽、北香那、柄本佑、白川和子、安達祐実 |
製作国 | 日本 |
映画「春画先生」の登場人物(キャスト)
芳賀一郎:内野聖陽
妻を亡くして取りつかれたように春画の研究をする春画先生。あからさまな変態なのに、滲み出る知性や造詣の深さと芯の強さで魅了してくるおじさん。
内野さんは、1968年神奈川出身。2013年に芸能活動時の名前を本名「まさあき」から「せいよう」に改めたそう。「(ハル)」で日本アカデミー賞新人賞受賞。高校生までは男子校で女性経験もなかったそうですが、こんな難しい役で”変”も”色気”も出せるなんてすごい。
女性とデートもしたことないし、恋人もいなかったし、女性に関しては無菌状態という感じで早稲田へ入ったんで、「こんなに女性がいる!」と思って、「しゃべれない」と思ってました(笑)
https://www.waseda.jp/inst/weekly/careercompass/1999/01/07/56593/
春野弓子:北香那
なんというか、”奥ゆかしさ”を感じる女性です。春画に陶酔している彼女からは楽しくてたまらないという活発な光を、先生を想う彼女からは愛おしくてどうしょうもないという堪えられない気持ちや恥じらいを、辻本や一葉といるときは特に負けん気であふれているのに自分の心には素直でまっすぐなところを。様々な顔を見せてくれるのに全てはじけそうなピュアさをもっている愛おしいキャラクター。
北香那さんは、1997年東京都出身。最近よく見る女優さんです。透明感あふれる姿はこの役にぴったりだなと思いました。2017年のドラマ「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」から様々な作品に出演。最近では大河ドラマに2年連続出演など活躍中^^
辻村俊介:柄本佑
辻村は、出版社で先生担当の編集であり先生の弟子でもある。通称いい加減な色男とのことです(その通り)。軽くて、聞きたくないことも言ってちょっかい出してきて、全部見透かされていて嫌なのに、本当は知りたいこと、言いたいことも分かってくれている罪な男です。去る者も追わず、いい男。(なのか?)
柄本佑が出ていたらその作品に期待してしまうような信頼感がありますよね。1986年東京出身。2018年に出演した作品により、キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞、毎日映画コンクール男優主演賞などを受賞。
本郷絹代:白川和子
先生の家政婦として代々お家に仕えている。弓子のことは、また先生が手を出している女の端くれにしか思っていなさそう。出演時間は長くないものの、彼女に認められれば1人前になっている気がしますね。
1947年長崎出身。春画先生公式HPのプロフィールに並ぶ出演作が、映画「女子寮」でデビュー。日活ロマンポルノ「団地妻」で人気になり、出演作には「青春の殺人者」「復讐するは我にあり」「凶悪」「少女」「光」「恋のいばら」と、、、なんだかこの作品にぴったりのラインナップでとても気になる俳優さんです。
藤村一葉:安達祐実
一葉は、先生の亡き妻にそっくりな姉というだけでもライバル視しちゃうのに、とっても艶美で妬ましい。それでも弓子にとって、先生にとって、二人にとって必要な存在であることがわかります。
安達祐実、1981年東京都出身。絶対年齢詐称してますよね、綺麗すぎるもん。俳優業は言わずもがなですが、近年はアパレルブランドも立ち上がて活躍しています。
映画「春画先生」の見どころ
見どころ①日本の商業映画初の無修正春画!
春画は室町時代に生まれ、江戸文化の華として知られる性を描いた画。喜多川歌麿や葛飾北斎など著名な浮世絵師も春画を描いていました。現在のアダルトコンテンツのようなジャンルではなく、当時は笑い画として様々な関係の人と性別問わず楽しめる娯楽の一部でした。(女性が嫁ぐ際の性教育や、災難除けのお守りとしても用いられたそう。)
春画をまとめた好色本は享保の改革によって禁止されますが、絵師たちは非公式で描いて売って江戸の裏の文化を支えたと言われます。同時期に西洋では浮世絵が評価高く受け入れられていたように、春画も西洋画家たちに大きな影響を与えており、今でも日本よりヨーロッパの方が春画の存在が広く知られているかも?
ただ注意としては、本作ではそこまで春画を掘り下げてはいません。残念….あくまでも軸にはありますが、物語は春画についてよいうより偏愛について。でも日本に陰りを感じる今、日本の良き文化を知るきっかけとなればいいなとも感じました(飛躍しすぎだし誰目線なんだ)
見どころ②色使い
正直観ながらいつの時代を描いているのか分かりませんでした。昭和っぽさを感じるフィルム感や先生の家は日本家屋らしく働く際は和装でと条件付き。雰囲気は若干レトロなのに3つカメラがついたスマホで会話している違和感がすごかったです。
日常の色は柔らかくて淡い感じ。弓子の服も淡い桃色やラベンダー色とふわっと綺麗なものが多くて、私はそういう淡く優しい色と強さの共存が好きなので個人的にドストライクでした。一方妖艶な一葉が出る幕はは鮮やかな赤や黒が映える画面。その辺の変化も楽しめたかなと思います。
見どころ③弓子(北香那)のはじけるピュアさ
正直この映画で最も良かったのはコレです。キャスト紹介も1人すごい熱量で描いてしまいましたが、先述の通り溢れんばかりのピュアさと楽しみ、恋焦がれ、負けん気の強さという要素がすべて輝きに見えます。こんなおじさんが理想とした女はいない。くそみたいだ!という口コミも見つけました。(言わんとしてることはとても分かる)でも、それを北香那さんの演技が良い方向にもっていっている気がします。
映画「春画先生」の評価
映画「春画先生」の個人的なおススメ度合いは★★★☆☆です。
★2~4の間で迷ったので間を取って3にしました。ストーリーは前半:春画、後半:偏愛といった構成になっており、一貫して春画がもっと色濃くかかわってきていたら★4だったなあと。なのでつまりは春画に精通した偏愛先生との偏愛ラブストーリーで弓子の演じ方が良いんだ!という気持ちで観ていただいて、良かったら感想を教えてください。
一方で、結構おじさんの理想論だと叩かれそうな女扱いのエロ展開でもあり、変態の集まりでもあるのでそういうのが苦手な人は見ないほうがいいと思います。そんなに過激じゃないけどね。
映画「春画先生」の感想
私は好きでした。でも作品をまるっともう一度観たい!というほどではないかな。
とにかくキャストがいい。弓子がかわいくて、うるおいとトキメキがぎゅうぎゅうに詰め込まれている姿に先生がハマる気持ちはよくわかります。先生のクソ変態野郎っぷりも、辻村のクソ男っぷりも、一葉の妖艶さも良い。でもこれはあのキャストであの演技でなければ良いと思えなかった気がします。誰かがダメだったらただの春画悪用、作り手の自己満足変態映画になっていたかも。(展開を知っていたら受け取り方は違うかもしれませんが、春画研究🌸みたいなイメージで臨んだのでね…)
自分はちょうど西洋絵画の本をいくつか読んだばかりで、その中で浮世絵など日本絵画の影響を誇らしく思っていたタイミングでの鑑賞だったので春画自体を楽しみに観たからどこか拍子抜けたところもある。だけど、春画も当時は”笑い画”とエンタメとして用いられていたわけで、彼らもそのエンタメに感化されているんだな~と観るなら筋は通っているのか(?)
演出の部分では、色使いは見どころ③で触れましたがカメラワークも観やすかったし作品のリズム感をかたどっているように思えました。特に弓子が全力で走るシーン。あれ一気に撮ったのかなあ。
あ、そういう展開?という疑問に覚えるところもありましたがキャストにより楽しんで観られる作品でした。
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